小児から妊婦さんの文献を読み解きます。
院長
]]>「今どきの歯周治療&メンテナンス講習会について」
1.歯周病の発症
歯周病は3つの因子が合わさった時に発症する。
?環境因子(喫煙、PC不良、薬物服用、歯周病への理解など)
?宿主因子(年齢、全身疾患、口呼吸、フードインパクション、早期接触、ブラキシズムなど)
?病原因子(微生物)
☆喫煙の有無、服薬内容の確認(Ca拮抗薬など)、ブラキシズムの原因(子供の頃に口を閉じなさいと言われた、など)きちんと問診を行う事で隠れていた因子が発見できる!
2.歯周病の昔と今
・1960年頃→歯周病の主な原因は歯石やプラーク量。
・今→バイオフィルムが主な原因。(歯石はバイオフィルムの温床になる)プラーク量よりもバイオフィルムの質が重要。
中でもレッドコンプレックスと呼ばれる3種類の細菌(Pg菌.Tf菌.Td菌)が病原性の高い菌種と考えられる。
※Pg菌は18歳頃、Tf.Td菌は小中高校生の頃定着する。
☆歯周病はバイオフィルムの病原性の変化で発症する。
☆歯周ポケットからの出血によりバイオフィルムの病原性が高まり、歯周病は進行していく!
3.マイクロバイオーム
マイクロバイオームとは常在菌叢のことであり、ヒトの腸、口、皮膚、胃など様々なところに細菌は存在し、共生関係にある。
☆マイクロバイオームのバランスが崩れると病原性が出てくる!
☆口腔内のマイクロバイオームの頂点がレッドコンプレックスである。
4.歯周病菌の定着〜発症までの流れ
?定着:18歳頃に口腔細菌叢が完成し定着する。
?待機:Pg菌は中年期頃まで待機している。
?共生:物理的なバリアとして機能している歯肉上皮バリアとPg菌との間に均衡が保たれ、共生状態になる。
?変化:マイクロバイオームとヒトとの共生は一定ではなく、年月と共に変化していく。(加齢による抵抗力の低下や清掃不良などから炎症が起こる。)
?発症:炎症により上皮バリアが崩壊。マイクロバイオームと歯周組織の共生関係が破綻。→歯周組織へPg菌が侵入し潰瘍面ができる。→潰瘍面に露出した毛細血管から歯周ポケット内に出血。→Pg菌は血液からヘミン鉄やタンパク質を採取し栄養源として、強力な歯周傷害性を持ち増殖する。→マイクロバイオームのバランスが崩れ発症。→Pg菌が上皮バリアが塞がれるのを阻害するので出血が続く。免疫も抑制するので他の歯周病菌も増殖しバイオフィルムも増加、歯周病は進行していく。
☆歯周ポケット内壁全歯5?分の潰瘍面積を集めると9?×8?にもなる。(手のひら1面分から常に出血排膿しているのと同じ!)
☆Pg菌は6種類いて、特に?型Pg菌は病原性が高い。非感染の場合と比較すると44.44倍リスクが高くなる!
☆Pg菌は唾液感染するので誰にでもいるが、発症するとは限らない。→予防できる!
5.口臭
・生理的口臭→卵が腐った臭い。
・歯周病由来の口臭→野菜の腐った臭い。
・全身疾患由来の口臭→生ゴミの臭い。
歯周病由来の口臭の原因はPg菌が発生させる揮発性硫黄化合物(メチルメルカプタン)であり、60%は舌苔より産生。
☆嗅覚をマヒさせるので本人や普段一緒にいるひとには臭いが分からない。
☆メチルメルカプタンは臭いだけではなく、組織破壊やコラーゲン合成を阻害する。→口臭の抑制も歯周病の進行を抑える。
6.歯周病と関係のある全身疾患
?糖尿病
歯周ポケットから出て血流に乗った炎症物質は、体内で血糖値を下げるインスリンを効きにくくするので糖尿病が発生、進行しやすくなる。
☆SRPやプラークコントロールで歯肉の炎症が引くと、インスリンが効きにくい体質が改善する。(HbA1cが低下)
?誤嚥性肺炎
1日に肺炎での死亡は約300人、95%が65歳以上。その多くが誤嚥性肺炎であり、主な原因は口腔内の細菌感染。
→プラークコントロールを肺炎予防とし、歯間ブラシや舌ブラシの使用を勧める。
・そもそもナゼ誤嚥しやすくなるのか?
→年齢とともに筋肉が衰え舌骨の位置が下がる。舌骨の位置が下がると嚥下の時に気道のフタが閉まるのが遅くなり誤嚥しやすくなる。
☆口腔領域の筋力トレーニングの習慣化も誤嚥性肺炎の予防に効果的!(あいうべ体操、肩を回す、よく喋る、歌うなどちょっとした運動でOK)
7.SRP時に要注意な歯の形態
?セメントエナメルジャンクション
→1割くらいの人はエナメル質とセメント質が離れていることがあり、傷付きやすい。
?グルーブ
歯根に見られる溝や凹みのことで、上顎小臼歯近心面や下顎側切歯遠心面にできやすい。上顎大臼歯の各根の近遠心などにもよく見られる。
→グルーブ内には歯石が付きやすくSRPも難しい。
☆人それぞれ歯の形も違うので、SRP時はデンタルなどを見ながら歯の形態を考えながら行う!
8.パワー&ハンドスケーリング
・エアスケーラーや超音波スケーラーの使用は80%、手用スケーラーの使用は20%くらいの割合で行う。
・ 超音波スケーラーのチップは部分によってパワーが異なり、先端部分2〜3?の間で先端から強→弱→中となっている。背面や角などでもパワーが変わるので、どこを当てるかによって効果と歯面への影響も異なる。
・チップの角度は歯面に対して15度以下にすることで、チップの先端2〜3?を当てることができる。角度が開くほど歯面や患者さんへの負担が大きくなる。
☆自分のポジションや患者さんの顔の向き、スケーラーの角度を確認しながら行うことで、自分と患者さんの負担を減らすことができる。
※歯石の種類※
・縁上歯石→唾液由来で白色
・縁下歯石→歯肉溝滲出液、血液などが関与
?茶褐色=ヘモグロビン由来?黒色=Pg菌由来(Pg菌は黒色菌とも言われる)
9.パウダーメインテナンス
・ステイン除去だけではなくバイオフィルムの除去などにも効果的。歯質や補綴物も傷付けないので自費の補綴物やインプラントのクリーニングにも◎。
・術前に口唇にワセリンを塗り、乾燥から保護する。
・円を描くようにクルクル動かしながら1.2回噴射していく。
・仕上げに研磨することでステインの再付着を予防する。
☆6ブロックに分けてSRPを行うときも、全体的にエアフロー・イリゲーション・ポリッシングなどを行うと、口腔内全体の細菌数が減りSRPの効果も上がる!
〈感想〉
歯科衛生士の内藤和美先生の歯周治療、メインテナンスについての講習会に行ってきました。歯周病の発症因子やスケーラー・チップの使い方などの基本の確認から、マイクロバイオームや口臭についてなど初めて聴く事も多くあり、大変勉強になりました。先生は、現場の衛生士さん達はSRPの時に自分のポジションは12時で、患者さんの頭の向きも常に同じままで行っている人がかなり多い!と言っていました。自分にも当てはまるところがあるので学校で教わったポジショニングなどの基本の見直しを行い、今回の講習会で得た知識はできるだけ多くの患者さんに伝えていきたいと思います。
記:みや
根管充填における講演でした。非常にベーシックでありますが重要な事を再度確認できました。
最後に質疑応答の際に非常に考えさせられる問題提起をしてくださった先生がおりました。
それは最近MTAによる根管充填後に再治療を行なうことの問題でした。
安易にMTAが有効だからと使用すると再治療が困難になるとのこと。今後学会からの報告があるようです。
標準的治療が基本なのです。と実感しました。
当医院では必ずラバーダムをしてから根の治療をしてます。
確かにMTA治療後の形成は非常に困難です。硬化すると非常に堅く削合が大変です。。。
]]>非常に勉強になりました。
]]>